チャプター 1
経営者がAIを学ぶときの、固有の難しさ
社員向けの研修であれば、決まった業務を対象にカリキュラムを組めます。経営者の場合はそうはいきません。業務の幅が広く、日によって何をしているかも変わる。共通の教材が作りにくい相手です。
時間の制約も大きい。まとまった学習時間は取れず、細切れの時間で試すことになります。試して詰まったときに聞ける相手がいないと、そこで止まったままになります。
そして最大の問題は、部下に任せてしまうと自分の判断軸が育たないことです。どの業務にAIを入れるべきかの判断は、最終的に経営者がすることになります。人任せにしたままだと、その判断ができない状態が続きます。
チャプター 2
最初の1週間は、何も作らない
初回は環境構築もツールの説明もせず、業務の棚卸しだけに使いました。代表の1週間を30分単位で書き出し、それぞれにAI適性の○△×を付けていきます。
この工程を飛ばすと、たいてい「作りやすいもの」から手を付けることになります。作りやすさと効果は別なので、それでは日常が変わりません。全体を見渡してから選ぶ必要がありました。
棚卸しの終わりに、使いどころの候補を3つに絞りました。ここで3つに絞るのも意図的です。1つだと習慣にならず、5つだと管理しきれない。毎日必ず触る状態をつくるには、3本が現実的でした。
チャプター 3
3本を日常に組み込むまで
2週目から、選んだ3本を1本ずつ一緒に作っていきました。作って渡すのではなく、代表本人が手を動かす形です。時間はかかりますが、次に自分で作れるかどうかがここで決まります。
1本目が動き始めた時点で、まず「毎日触る」状態をつくることを優先しました。機能を増やすのは後でいい。使わないまま高機能になったものより、粗くても毎朝開くもののほうが定着します。
3本が揃ったあとは、調整と定着に時間を使いました。実際に使ってみると、想定と違う使い方をしている部分が必ず出てきます。そこを本人と一緒に直していく期間です。
チャプター 4
自走と、社員への展開
後半は、判断軸を言葉にする時間に充てました。うまくいかなかった例もあえて作り、AIに向く業務と向かない業務の線引きを体感で持ってもらっています。失敗の経験がないと、この線引きは身につきません。
最終週には、代表自身の手で新しい使いどころを1本つくるところまで進みました。ここまで来れば、私たちが離れても止まりません。仕上げとして、社員へどう広げるかの設計を一緒に描いています。
並行して、営業まわりの仕組みも構築しました。名刺やSNSから集めた顧客情報をひとつの表にまとめ、AIが毎日それぞれの最近の動きを調べ直します。誰に今アプローチすべきかが、理由と優先度つきで毎朝並ぶ状態です。
- 課題
- AIを業務に取り入れたいが、何から手を付けるべきか決まらない。経営者の場合、ここにさらに難しさが重なります。自分で試す時間が取れず、かといって部下に任せると、どこにAIを使うべきかを判断する軸が自分の中に育ちません。
- 打ち手
- 2ヶ月・週1回の伴走を組みました。最初の週は何も作らず、代表の1週間の業務を30分単位で書き出してAI適性を仕分けるところに使っています。そこから使いどころを3つ選び、1本ずつ一緒に作って日常に組み込んでいきました。
- その後
- 並行して、名刺やSNSから集めた顧客情報をAIが毎日調べ直し、次に連絡すべき相手を理由と優先度つきで出す仕組みも構築しています。


