発話から約1秒でアラート
チャプター 1
「聴ける」と「見張れる」は別のこと
使っていたCTIには、通話録音も管理者によるモニタリング機能もありました。それでも課題が残っていたのは、モニタリングが一度に1人ぶんしか聴けないからです。
個人のお客様を相手にする商材では、不適切な発言が1件あるだけで事業全体が止まりかねません。事後に録音を確認しても遅く、その場で気づける状態が必要でした。
オペレーターがリモート勤務であることも効いています。同じフロアにいれば、周囲の耳が抑止として働く。リモートではそれが無くなるので、仕組みで補う必要がありました。
チャプター 2
アプリを配るのをやめて、拡張機能にした
最初に検討したのは、デスクトップアプリを配って端末の音声を拾う方式でした。これは却下しています。音声認識を端末側で回すと精度が出ず、PCも重くなる。さらに配布とアップデートの運用が重くなります。
採用したのはChrome拡張です。オペレーターはもともとブラウザ上のCTIで架電しているので、その同じブラウザに拡張を入れるだけで済みます。相手の声はタブの音声から、自分の声はマイクから取得し、双方向を揃えて送ります。
配布もChromeの管理ポリシーで一括でき、勝手に無効化できないよう設定できます。技術的な優劣というより、運用に乗るかどうかで選んだ形です。
チャプター 3
速さと正確さを、2段階で両立させる
検知は2段階に分けました。1段目は辞書での単純なマッチで、これは1ミリ秒もかかりません。2段目は、1段目に引っかかったものだけをAIに渡し、文脈として本当にNGかを判定させます。
全部をAIに判定させると、速度もコストも見合いません。逆に辞書だけだと、言葉尻が一致しただけの誤検知が大量に出て、アラートが無視されるようになります。段を分けることで、速さと正確さの両方を成立させています。
発話からアラートまでの内訳は、音声の取得と送信、文字起こし、辞書の一致、AIの文脈判定、そして管理画面への通知。ここまでを通しておよそ1秒に収めました。
チャプター 4
見られている、と分かる設計にする
検知の仕組みと同じくらい重視したのが、オペレーター側の画面表示でした。常時「モニタリング中」と分かる表示を出しています。
隠して監視するほうが不正は捕まえやすい、という考え方もあります。ただ今回の目的は、違反を見つけることより起こさないことでした。見られていると分かっている状態そのものが、いちばん効く抑止になります。
個人情報を扱う前提なので、端末の配布とネットワーク側の制御を含めた設計にしています。仕組みだけを入れても、その周りが緩いままでは意味がないためです。
- 課題
- リモート勤務のオペレーターが個人向け商材を扱うため、コンプライアンス違反の発言を管理者が把握できる状態が必要でした。使っていたCTIには録音と管理者による通話モニタリングはありましたが、聴けるのは一度に1人ぶんだけです。
- 打ち手
- Chrome拡張で通話の双方向の音声を取得し、リアルタイムで文字起こしする仕組みを作りました。NGワードの判定は辞書での一次検知とAIによる文脈判定の2段階にし、誤検知を抑えながら速度を出しています。
- その後
- 発話からおよそ1秒で管理者の画面にアラートが上がります。オペレーター側の画面には常時「モニタリング中」の表示を出し、抑止としても働く設計にしました。



